「ハクソー・リッジ」コテコテの構成ながら、容赦のない描写が見応えあり。

ハクソー・リッジ イメージ

公開からややしばらく経ってから、にわかに気になり始めたので、気の向くまま見てきました。 いやー、これはもっと早くに見ておいて良かったかも……。

個人的好みなどもあり、前半部分は若干退屈ではありましたが、“そのおかげもあって”後半部は圧巻でした。 コテコテというか手堅く丁寧な描写と、容赦のない描写が一緒になった、優良な戦争映画と言えるでしょう。

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: 前半は主人公の生い立ちなどを丁寧に、後半は戦場のカオスを容赦なく描く。

ではまずは予告編を。 と言っても、フルの予告編だと若干楽しみを損なうネタバレがある印象なので、ティーザートレーラーの方です。

これだけ見ると、終始銃弾が飛び交う戦場オンリーの映画のようにも思えますが、実のところこの映像はほとんどが「後半部」といっていいパートのものです。

メル・ギブソン監督ということで、宗教観的なものが根底に色濃くある(+容赦のない残虐描写がある)……神の教えに愚直あるいは実直に従い、「敵を殺さず、味方を救う」衛生兵として戦争に参加した衛生兵のお話です。 実話ベースとのこと。

前半部分では主人公であるデズモンド・ドス二等兵の幼い頃のエピソードに始まり、最愛の人との出会いや、入隊・訓練などを比較的緩慢に……というよりは丁寧に描いていきます。

他方、後半のタイトルにもなっている「ハクソーリッジ」での戦闘では一変し、緩慢さなどどこかへ消え、容赦のない戦場描写が次々と映し出されていくようになります。

特に後者はグロテスクなシーンも頻繁に出て来るわけですが、それだけあって、迫真性の高い映像に仕上がっています。

: 前半はやや退屈だった。 しかし、それは無駄では決してなかった。

率直に言って、後半の戦場パートに移るまでは比較的緩慢かつ平穏(というわけでもないのだけど)なシーンが多く、退屈に感じたのは事実です。

特にデズモンドと恋人……後に妻となるドロシーとのロマンス部分はコッテコテの描写であり、恋愛映画を見ない私にはいささかツラい時間でした。 まぁ、実話ベースということですし、よくある無駄なロマンスでは決してないんですけれども。

それだけでなく、デズモンドを演じた俳優が、個人的にはあまり好きじゃないタイプの俳優さんなもんで、そこもまたちょっとシンドい理由だったのかもしれません。

もっとも、彼の演技はとても良かったんですがね。 純朴で、ある意味愚直な、田舎の青年。 それをとてもよく演じていました。 どことなく元の人物の若い頃に雰囲気が似ていたりもしましたし、彼だからこそ、の映画でもあると思います。

そのロマンスやら、家族とのアレコレやらを経て、デズモンドは入隊するわけですが……ここで、これまたコッテコテの訓練シーンが。 鬼軍曹ライクな人はいるし、内輪もめもあるしで、まぁ新鮮味はないですね。

……とまぁ、正直、最後までこんな塩梅で終わっていたら私の中では「凡作」で終わっていたと思います。 それぞれの手堅さや作り込みはいいものの、(実話ベースとはいえ)面白みや新鮮味が乏しく感じられたからです。

しかしそれは杞憂であり、同時に、この、ともすれば退屈ですらあったパートがあってこそ、後半部分が鮮烈に感じられるのだと鑑賞後には強く思います。

: とにかく容赦のない戦場描写が圧巻。

さてさて、後半部に入ってまず驚いたのが、この「ハクソーリッジ」とやらの場所なんですよ。

今作に関しては前情報はほとんど入れておらず、「ハクソーリッジ? ってどこだべな」ってなもんで、全く知らなかったし調べようともしないまま劇場へ行ったわけなんですが。

ハクソーリッジ……そう、舞台は沖縄だったんですね。

ということはつまり、相対するのは……当然日本兵。 マジっすか……と、ここまでデズモンド側の視点であったゆえに、そして日本人であるがゆえに、ちょっと戸惑ったというか。

アメリカ側の視点で描かれるが故に、まぁ、描写なんかもアメリカ寄りになるのは……この手の映画ではしゃーないとして、この戦いの描き方がとにかく凄まじいの一言で。

まばたきひとつする間に、誰かが銃弾を受け、爆風で吹き飛ばされ、四肢を散らし、命を落とす。 もう、状況がよくわからない。 まさに混沌。 戦場のカオス。

特にゴア表現……グロテスクな表現も容赦なく差し込んでいますね。

戦争映画なんかでも、“そういう”シーンはカメラのパンで直接的に見せないとか、ぼかす、遠目にする……とかってするものもありますが、本作はそうした躊躇はなく、むしろ進んでリアリティの構築のためにゴア表現を取り入れているように思います。

それだけでなく、空気感や人物の描写も抜かりはない感じでしたね。

特に、デズモンドらが到着後にすれ違う先発隊の兵士達の顔。 全く生気の感じられない表情をしていて、戦場で精神を蝕まれた兵士の顔だなぁ……と強烈な印象を与えてくれました。 ここは本当に凄味を感じざるを得ないシーンでしたよ。

音響も(通されたスクリーンの音響レベルがちょっと物足りなかったにも関わらず)迫力があり、文字通り空気を震わす爆裂音など、臨場感が強くあります。 もっといい音響設備の整った劇場で見ていたら、より凄まじい映画体験になったのだろうなぁと思います。

と、ちょっと話が横に逸れてしまいましたが……そんな作り込みの映像で相対するのが日本兵。 正直、複雑な心境でした。 若干人間味を感じない描写になっていたのが、逆に救いだったかも……。

ここで、ありがちに、日本兵側のエピソードとか、心を一部で通わすとか……っていうシーンがないってのは英断だとは思いますけどね。 下手にそれをやられていたら、今作に関しては興ざめしていたかもしれません。

沖縄戦がどうなったか……は言うまでもないのですが、それでありながら、(海外の)日本兵に対するどこか得体の知れない畏怖・恐怖のようなものは、映像からも強く感じられます。 死を恐れないイメージは特に強くあるようで、あるシーンでは私も恐怖感を覚えました。 これ、ヤバいわ……ってなもんで。

どこまでいっても“外”からの視点なので、日本人には色々と思うところがあったり、モヤッとする部分もあるかと思うのですが、これもまた(映画とはいえ)真実の一片であろうし、“外”のからの視点や印象というものを感じ取れるという点で、有意義な作品だと思います。

あ、でもですね、一点だけ。

デズモンドらが到着した直後だったと思うんですが、一瞬だけ、鳥居が映った気がするんですが……ただ、なんでここに鳥居が!?ってな変な場所だったような気がするんですよね。

まぁ、これは洋画ではつきものですし、私も視界の隅で捉えただけなので、「本当に変な場所だったか」は自信がなかったりするんですが……そこだけ、気になりました。

ともあれ、戦場でのシーンは圧巻です。 戦闘再開時なんかは心から「もうあの戦場には戻りたくない! 絶対行きたくない!」と思わせてくれるくらいには、こだわりにこだわり抜いた映像体験になっていますよ。

: 曲も派手ではないものの、いい感じ。 作曲担当はなんと……。

作曲担当はRupert Gregson-Williamsというコンポーザーらしいのですが……ん? Gregson-Williams?

そう、今作のコンポーザーは、「ナルニア」や「シュレック」「プロメテウス」……ゲームでは「メタルギアソリッド」なんかで曲を手がけたHarry Gregson-Williamsの弟さんなんですね!

で、他にもJosh Gregson-Williamsという兄弟がいるようなんですが、彼もまたコンポーザー……作曲家一家のようですね(;´Д`)スゴイ

Harry Gregson-Williamsは個人的に好きなコンポーザーの一人なので、思わぬ発見・出会いがあってニンマリです。

: 最近の戦争映画の中では頭一つ分抜けた作り込み。

というわけで色々書いてきましたが、かなり見応えがあり、よい映画体験をもたらす作品だったと思います。

内容自体は難解なこともなくわかりやすく……そして、戦争映画の持つメッセージ性である「戦争の無情さ、悲惨さ、そして虚しさ」といったものを、見る人の多くに届けられるような出来になっているんじゃないかなと。

ただ、どうしても戦場パートでのグロめな描写は受け付けない人もいると思いますし、(予告編で秘匿されたように)沖縄戦を舞台にしているということもあって、色々と思うところがある人もいると思います。

しかしそれでもなお、本作は見るに値する作品だと思います。 アメリカ側の視点の映画ではありますが、戦争というものに対する思いや考えは一緒でしょう。 それを映画を通して異なる視点からでも再確認できるというのは、有意義だと私は思います。

映画「ハクソー・リッジ」公式サイト|6.24 Sat. ROADSHOW

投稿者プロフィール

壬生狼

みぶろと読みます。 活動名は他にmiburo666・Lupus(ルプス)など。

ゲーム、音楽、映画などが趣味。 このブログではゲーム系記事を公開しています。

現在のアイコンはPSO2のマイキャラであるルナール。


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