「フィンチ家の奇妙な屋敷でおきたこと」美しさと哀しさに彩られた一家の物語。

フィンチ家の奇妙な屋敷でおきたこと イメージPS4
美しく、切ない、ある家族の辿った運命を知る旅。 原題: What Remains of Edith Finch

喜びと悲しみの積み重ねが、現在なのです。 しかし、このフィンチ家に人々は、あまりにも後者に寄り添い過ぎていたようにも思えます。

「The Unfinished Swan」を開発したチームによる、一人称視点のADV……いわゆるウォーキングシミュレーターとも呼ばれるタイプの本作。

独特な世界を、ユニークな表現方法で描いた「The Unfinished Swan」に引き続き、本作でも独自性の高い世界と表現が光ります。 サクッとプレイでき、大きな感動(感傷)に浸れるのも魅力のひとつでしょう。

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概要: ある一家の死を通して生を見る。

英語版のトレーラーにはなりますが、ひとまずどうぞ。

What Remains of Edith Finch Official Launch Trailer

トレーラーに描かれる、いわば荒唐無稽な映像だけ見ると、過去にPS3でリリースされたDATURA(かなりマイナーな作品なので伝わらないと思いますが)を彷彿とさせられるのですが、本作にはちゃんと幹となる物語があり、そしてそこから乖離しないものしか本作には含まれていません。

「実家に帰り、家族のことを知る」という点では、「Gone Home」が近いかもしれません。 というより、大雑把な枠組みとしては上のDATURAよりも共通点は多いです。 無論、内容や方向性は大きく異なるのですが。

プレイヤーは、母親を亡くし、Finch家最後の生き残りとなってしまったEdithとして、実家に帰ることになります。 そしてそこで、Finch家の人々がいかにして生を全うしたのか(死と向き合ったのか)、を追体験を通して知っていくのです。

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実家は木々に囲まれた土地に、寂しげに存在します。 遠くにちらっと映っている塔のようなものが、帰るべき家です。

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実家の全容は、増築を繰り返したためにアンバランスな危うさと、それでも“繋いで”いく意思を感じます。 何を“繋ぐ”のかは後述。 テキストがシーンにマッチしたスタイルでフェードアウトしていくのも印象的。 映像じゃないと伝わらないでしょうけれども……。

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メニュー画面では手記に描かれた家系図が確認可能。 ご覧の通り、早世しがちな家系であることがわかります。 いったいなにがこの家族に……?

つまり、本作ですることといえば、Finchに名を連ねた一家の死を体験することなのです。

ゲームプレイ中に、事故やミス、物語上の展開でプレイヤーキャラが死亡することは珍しくない描写ではあります。

が、死そのものを目的として……死に向かってプレイするゲームというのは、あるいは、死を描くために生み出されたゲームは珍しいのではないでしょうか。

とはいえ、本作は死を軽んじたり面白おかしく描写しているわけではありません。 死を通して、生を……そして、死が身近であるからこそ、それでもなお家族として命を繋いでいこうとした、一家の軌跡を描いているのです。

それは哀しくもあり、美しくもある描写や演出によって描かれ、過程はどうあれ最後には死が待ち受けているのは自明であっても、プレイすることをやめることができない没入感を生み出すことに成功していました。

Good: 奇妙ながらも興味深く、胸に迫る最期。 ゲーム性とも見事にマッチしている。

さて、そんな本作のメイン部分となる「一家の死」なのですが。 これがまた、表現は悪いですが実にバリエーションに富んでおり、中にはファンタジックなものまで含まれています。

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冒頭で読むことになるテキスト。 実はこのテキストも、誰が誰に向けて書いたものなのか?という点が重要でもあったりします。

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最初に追体験することになるMollyでは……(ごく一部で)大人気のサメになることができます!

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触手を持ったモンスターにも……?

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人が変われば、追体験の演出もガラッと変わります。 それにしても長く続いているものですね……。

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なかでもGregoryは……すごく痛ましいです。 追体験の内容自体は、一見楽しげだけに。

最初のMollyがなかなかに強烈なだけに、プレイしてすぐはあっけにとられるかもしれません……というか私がそうでした。

しかしながら、プレイを進めていくとそれらの“脚色”をプレイヤー自身が紐解くことができるようになっていきますし、それに従ってどんどん感傷的になっていくのです。

家系図

追体験を終えるたびに、Edithは手記に彼らのイラストを描き加えていきます。 その描き方にも、愛を感じます。

私はトロフィー回収の都合上2周ほどプレイしたのですが、2周目だからこそ理解できた・気づけたこともあり(先のMollyの受け止め方も含め)、一本道で短編と言えるプレイボリュームでありながら、得られるモノは豊かであったと言えましょう。

ところで、ウォーキングシミュレーターと呼ばれる系統の作品は、概して移動速度が遅い傾向にあります。 それが唯一のネックになったりしがちでもあります。

本作も例に漏れず移動速度はゆっくりです。 が、おそらくストレスになることはあまりないんじゃないかなぁと思います。 その理由はふたつ。

プレイヤーが主として操作するEdithが、“ある事情”を抱えているのですばやく移動できない(走れない)というのもありますが、そもそも、移動の大部分を占めるFinch家の邸宅というのが、決して広すぎるということがないのが理由のひとつです。

もうひとつは、プレイの流れが主に、Edithによる家の探索とFinch一家の死の追体験を交互に行うから、という理由です。

前述の通りFinch家の死因は実に多種多様で、となると、追体験の内容も十人十色。 操作や操作感もまた十人十色なのです。

中には追体験の中で(遅鈍な)移動を行わないものもありますし、Edithでの探索とちょうどいいバランスで散りばめることで、プレイがダレたり飽きたりすることのないような作りになっているんですよ。

往年のホラー映画じみた演出(この手法は見事でした!)とBGM(映画・サイコのテーマっぽくて良かったです)を用いたものもあれば、見下ろし視点のRPGめいたものもあったりして、悪趣味に聞こえるかもしれませんが「次はいったいどんなものを見せて、体験させてくれるんだい?」ってなもんで。

ゲームとしてはウォーキングシミュレーターという括りではありますが、本作はゲーム性と見事にマッチしたストーリーテリング……いや、ナラティヴと、その多様性により他とは一線を画す作品となっていると強く感じます。

Good: 映像、音響も美しい。

見事なゲームプレイとナラティヴのミックスに成功した本作。 強い没入感と感動を少なからず生み支えているのは、映像と音響にほかなりません。

まず映像面ですが、実によく調和の取れた美しさを醸すテイストになっていると思います。 小道具なども味があり、トータルでの美しさに気を遣っているのだろうなぁと。

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部屋の一角。 空気感や色合いなどに調和が存在し、そこかしこに生活の痕跡と哀愁のようなものが漂っているように感じられます。

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一見幸せそうな家族写真。 しかし、その写真の側には……。

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コレが貼ってあったりします。 切ないなんてもんじゃないです。

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からの、突然の米!

こうした小道具に至るまで作り込まれた作品は……例にも出した「Gone Home」もそうでしたが、より身近で、見た目だけに依らないリアリティを向上させることができると思っています。 その点でも本作は抜かりないわけです。

そして楽曲は、メランコリックでエモーショナルな、ピアノ主体の静かな楽曲が印象的。

これはまぁ……実際にプレイするなり聞いてもらうしか伝えようがないんですが、とても素晴らしいです。

なので、とりあえずSpotifyのプレイヤーとAmazonのリンクを埋め込んでおきます。 後者はAmazon Music Unlimited会員なら聴くことが可能です。

結論: 同系作品における名作のひとつ足りえる作品。

本作も様々な賞にノミネートされたり、受賞をしているから……というのを抜きにしても、実際のプレイから鑑みても、本作は同系作品の中でも際立った魅力と完成度、体験を提供している作品であると思います。

こうした映像面での表現は、例えば映画などでも可能かもしれませんが、実際に操作して体験する……という点においては、やはり(今のところは)ゲームが持つ強みです。

それをうまく利用して物語を描いてみせたという作品性・ゲーム性のおかげで、他の多く存在するウォーキングシミュレーターや探索ADVの類に埋もれず、強い輝きを放てているのだと思います。

本作は何度か名前を出している「Gone Home」に比べれば万民向けの内容(……多分)だと思います。 同系作品を好む人は、ぜひ、触ってみていただきたいなぁと思います。

そして、美麗な音楽とともに、Finch家の人たちがどのように死と相対したか、受け入れたか、繋いでいったのかを知り、心震わせてみてください。

フィンチ家の奇妙な屋敷でおきたこと(PS Store)